今回取り上げる食材は麩(ふ)です。

あまり食べる機会はなさそうですが、みそ汁の具に入っていたりすると、意外に新鮮で美味しく感じます。

麩は、小麦粉を原料とする加工食品。

室町時代初期に明から渡来した禅僧によって、日本に製法が伝来したとされる説が有力ですが、奈良時代に伝わったとする説もあるそうです。

最初は仏教と結びついて食べられました。

肉食を禁じられていた修行僧たちにとっては、貴重なタンパク源として重宝がられたといいます。

その後、精進料理で盛んに用いられるようになり、一般民衆の間にも広がっていきます。

このため、京都の精進料理には欠かせない材料であり、京料理としても重用されています。

また、沖縄料理の炒め物の材料としても多く用いられており、北海道の一部や東北の秋田県などでは、ラーメンの具としても活躍しています。

料理以外でも生麩や焼き麩などは、お菓子としてもよく利用されます。

現在では健康志向の人たちから熱い視線を集めており、ヘルシーな食材としても注目されています。

さらに赤ちゃんの離乳食や、高齢者や病人の食事にもおすすめです。

麩はほとんど味がしないため、栄養がなさそうに思われがちですが、特にしっかりミネラルがギュッと詰まっています。

さらに、コイのエサとしても重宝がられ、ヘラブナの釣りエサとしてもよく用いられています。

さてこんな麩をワンちゃんに与えも大丈夫でしょうか?

犬に麩を食べさせても大丈夫?

答えは大丈夫。

麩には中毒が生じるような問題成分は含まれていません。

ただし原料が小麦粉のため、ワンちゃんにとってはアレルゲンになりやすい食材のため、注意が必要であり、与え過ぎないようにすべきです。

麩の主な栄養素

成分名           成分量(100gあたり)

エネルギー         163kcal

水分            60g

タンパク質         12.7g

ナトリウム         7mg

カルシウム         13mg

カリウム          30mg

リン            60mg

亜鉛            1.8mg

銅             0.25mg

鉄             1.3mg

ビタミンB2         0.03mg

ビタミンB6         0.02mg

葉酸              7μg

ナイアシン         0.5mg

食物繊維          0.5g

参照:食品成分データベース(文部科学省)

「亜鉛」

亜鉛は体内で作り出せないため、食べ物から摂取する必要があります。

亜鉛は、細胞の再生やストレスの軽減、免疫力の向上に効果があります。

また、愛犬の皮膚や鼻、肉球などがカサカサだったり、被毛の艶を気にしている、さらにフケ予防などに、亜鉛は効果を発揮します。

「鉄分」

鉄分は、血液の赤血球に含まれるヘモグロビンを作り、全身へ酸素を運んでくれます。

このため、貧血予防に効果を発揮して役立ちます。

また、鉄分が不足してしまうと、ワンちゃんの元気がなくなり、疲れやすくなるので注意が必要です。

「葉酸」

葉酸は、ビタミンB12とともに造血のビタミンと呼ばれ、細胞や新しい赤血球を作り出すため、貧血を予防する効果があります。

また葉酸は、正常な遺伝情報を持つDNA細胞の生成に深くかかわり、そのため胎児の先天異常のリスクを減らしてくれます。

さらに、生まれてくる子犬の発育にも役立つため、妊娠中の母犬には積極的に摂取して欲しい栄養素です。

「ビタミンB6」

「ピリドキシン」とも呼ばれる水溶性ビタミンの一つです。

ビタミンB6は、タンパク質がエネルギーとして使われる過程で、アミノ酸に作り変える酵素の働きを行い、効率よく体内へ取り込むことができるビタミンと言われています。

また、ビタミンB6を活性化するには、ビタミンB2の存在が不可欠であり、両方を含む麩は持ってこいの食材です。

「ナイアシン」

ナイアシンはビタミンB3とも呼ばれ、動脈硬化を予防する効果があるとして期待される成分です。

油を摂りすぎたり、人口調味料を摂取することなどによって、ドロドロの血液の人が増えています。

このような流れの悪い状態だと、血液が詰まってしまい動脈硬化を引き起こす原因となる恐れがあります。

ナイアシンを含む麩には、ドロドロの血液の原因とされる高コレステロールを「コレステロール低下」へと導く作用が働きます。

また、糖質、脂質、タンパク質の代謝を行い、循環系、消化器系、神経系などの働きをサポートする作用が生じます。

麩の種類

麩には、原料を茹でた生麩(なまふ)、焼いた焼き麩(やきふ)、油脂で揚げた揚げ麩(あげふ)、煮た後に乾燥させた乾燥麩(かんそうふ)などがあります。

生麩は、湿麩(しっぷ)と呼ばれるグルテンに、小麦粉または餅粉を加えて練って、それを蒸すか茹でて作ります。

焼き麩は、生麩にデンプンや膨張剤を加えて練って、それを焼いたものです。

出汁が染み込みやすくなるため、汁物、煮物、鍋などの料理に適しています。

各麩の主要産地を紹介します。

生麩:金沢市・京都市・奈良県

焼き麩:山形県・新潟県村上市・奈良県・沖縄県

揚げ麩:宮城県・岩手県

主な麩の種類を紹介。

主な麩の種類
もち麸:グルテンにもち粉を加えて作る生麩です。

まんじゅう麩(岩船麩)(新潟県):饅頭型をした麩であり、新潟県村上市岩船地区が発祥地のため、「岩船麩」とも呼ばれます。

つぶし麩:まんじゅう麩に蒸気を当てて蒸します。 そして軟らかくなったところを円盤状に押し潰した麩であり、密度が高いのが特徴。

よもぎ麩 ・あわ麸:もち麸によもぎやあわを加えた生麩です。

もみじ麩・うめ麸・さくら麸:もみじ・うめ・さくらの形を真似て着色して作り、季節を彩る生麩として使用します。

てまり麩 :糸状にした生麩を巻きつけることで、てまりに似たてた生麩であり、お祝い事の重詰や吸い物に使われます。

車麩(新潟、石川 、沖縄):竹輪のようにアルミの棒に麩の生地を巻きつけて、回転させながら直火焼きして、何重にも重ねて焼いた焼き麩であり、沖縄料理には欠かせません。 また特に越後地方では縁起物とされ、行事の際の煮しめとして使います

板麩(山形):棒に生麩を巻きつけて直火で焼いて、棒を抜いて押し潰して板状にした最も古い焼き麩であり、山形県庄内地方の特産のため、庄内麩とも呼ばれます。 湿らせたものを汁の実にしたり、魚のすり身を包んで蒸したり揚げたりし、とても香ばしさがあるのが大きな魅力です。

まつたけ麩:マツタケの形に作った麩であり、傘の部分を着色してそこにマツタケの香りをつけた焼き麩で、吸い物、茶碗蒸しになどによく使います。

油麸(宮城):油で揚げてあるのが特徴で、宮城の特産であり仙台麩とも呼ばれます。 棒状に仕上がりフランスパンを思える見た目であり、卵とじにして油麩丼としてもよく食べられています。 煮て卵とじや丼に、戻してきゅうりやワカメと酢のもの、炒めたり鍋の具に使う

すだれ麸(石川県加賀地方):巻きすと呼ばれる、巻き寿司を作る際に使うすだれの上に、生麩を伸ばして巻き巻きこんでつくり、茹でるか蒸して天日干しした麸です。 金沢(加賀)の郷土料理「治部煮」やすき焼き、酢の物などに欠かせません。

丁子麩(ちょうじふ)(滋賀・京都):一粒ずつ箱型の金属型に湿麩を入れて、生地を整形し焼き上げた長方形の焼き麩で、荷崩れしにくくなめらかな食感が特徴であり、煮炊き物やすき焼きに適しています。 畔畝や条里の線に見立てた筋が入っているのが特徴。

安平麩(あんぺいふ)(山口):原材料はグルテンと小麦粉であり、丸餅やシュークリームを思わせるように大きくふっくら作り焼いた焼き麩です。

豆麩(福島県会津地方):会津地方の郷土料理のこづゆの材料として使用される、豆のような丸い形をした麩。

大和麩(奈良県):バゲットのような形をした奈良県独特の麩です。

好みの大きさに切って使うのが特徴で、香ばしい上に、なめらかできめ細かい舌触りともっちりとした食感があります。

犬に麩を与える時の注意点

「戻し方に注意」

焼き麩を戻す際には、いきなり熱湯でもどすのはNG。

熱湯に入れてしまえば、固く縮んでしまうため注意が必要です。

このため戻す際には水かぬるま湯で戻し、必ず芯まで柔らかくなるよう確認して、しばらくつけて置くようにしてください。

麩が芯まで柔らかくなったならば、水分をしぼって細かく切ってあげてください。

柔らかい、フワフワな麩にしてあげるのがおすすめです。

「栄養バランスに注意」

麩は低カロリーの食材であり、またスポンジ状の網目構造のため保水力が高く、腹持ちもよく満腹感も得やすいため、愛犬のダイエットに適した食材です。

ただし、栄養バランスには偏りがある食材のため、栄養バランスに注意が必要です。

そのため、フードのカサ増し程度に与えるのがおすすめです。

「アレルギーに注意」

麩の原料は小麦粉のため、犬にとってはアレルゲンになりやすい食材のため、注意が必要です。

このため、初めて愛犬に麩を食べさせるときは、極微量与えることがまずは常識。

そしてしっかり、愛犬に変化が何か生じないか観察します。

元気がなくなるなど、少しでも気になる変化が感じられた時には、それ以上与えないようにしてください。

アレルギーが起こったケースでは次のような症状が起こります。

・目の充血

・体を痒がる

・湿疹、じんましんが出る

・嘔吐、下痢など

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