犬のドッグフードの総合栄養食と一般食は基準がどう違う?
犬のドッグフードには、総合栄養食と一般食の2種類がありますが、あなたはその違いについて理解していますか?
分かりやすく伝えると、総合栄養食は主食であり、一般食はおかずだといえます。
主食と言えば、白米のご飯をイメージしてしまう人もいそうですね。
ここで言う主食とは、総合栄養食と呼ぶように、ワンちゃんが元気で生きていくための全ての栄養素が詰まった食事という意味です。
総合栄養食としてのドッグフードの定義は、ワンちゃんが生きていくために必要な栄養素を含んだ形で作られ、そのため、総合栄養食であるドッグフードと水さえあれば、他に何も与えなくて犬が生きていけるとされています。
一方、一般食は、実際にパッケージを見てみれば、「副食」「嗜好食」「おかず食」などと表記されていたりします。
この表現からも分かるように、一般食の場合、栄養がバランス良く全て整っておらず、一般食はそれだけを与え続けていると栄養バランスが崩れて、愛犬の健康に影響が生じてしまいます。
このため、一般食をメインとして、うっかり主食にしてしまわないことが大切です。
このような違いがあるため、飼い主さんはしっかり総合栄養食と一般食の違いを理解しておく必要があります。
さあ何となくイメージは分かったはずです。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
総合栄養食
フードのパッケージをチェックすれば、ちゃんと総合栄養食との表示がありますが、当然メーカーが独自の判断で勝手に「総合栄養食」と表示することは出来ません。
総合栄養食と明示するためには、「ペットフード公正取引協議会」が定めた基準をクリアする必要があります。
この基準とは、法律で決められているものではなく、あくまでも「ペットフード公正取引協議会」という日本のペットフードの業界団体が、自主的に定めている基準値です。
ペットフード公正取引協議会は、AAFCO(米国飼料検査官協会)Association of American Feed Control Officialsの略称で、「アフコ」もしくは「アアフコ」と呼ばれる機関が制定した基準(米国飼料検査官協会栄養基準)に基づいて、その基準値を定めています。
「栄養基準値」
AAFCOの基準で示されている栄養素は、次の4つとなります。
・タンパク質
・脂質(脂肪)
・ビタミン
・ミネラル
この4つの栄養素について、さらに幼犬用と成犬用の2つに分けて示しています。
「タンパク質」:AAFCO最低基準は、幼犬が22.5%以上、成犬が18.0%以上。
「粗脂肪」:AAFCO最低基準は、幼犬が8.5%以上、成犬が5.5%以上。
・リン:幼犬1.0~1.6% 成犬0.5~1.6%
・カルシウム・リンの比率 幼犬1:1~2:1 成犬1:1~2:1
・カリウム:幼犬0.6%以上 成犬0.6%以上
・ナトリウム:幼犬 0.3%以上 成犬0.08%以上
・塩化物:幼犬0.45%以上 成犬0.12%以上
・マグネシウム:幼犬0.06%以上 成犬0.06%以上
・鉄:幼犬88 mg/kg以上 成犬40 mg/kg以上
・銅:幼犬12.4 mg/kg以上 成犬7.3 mg/kg以上
・マンガン:幼犬7.2 mg/kg以上 成犬5.0 mg/kg以上
・亜鉛:幼犬100 mg/kg以上 成犬80 mg/kg以上
・ヨウ素:幼犬1.0~11 mg/kg 成犬1.0~11 mg/kg
・セレン:幼犬0.35~2 mg/kg 成犬 0.35~2 mg/kg
・ビタミンD:幼犬500~3,000 IU/kg 成犬500~3,000 IU/kg
・ビタミンE :幼犬50 IU/kg以上 成犬50 IU/kg以上
・チアミン(ビタミンB1):幼犬2.25 mg/kg以上 成犬2.25 mg/kg以上
・リボフラビン(ビタミンB2):幼犬5.2 mg/kg以上 成犬mg/kg 5.2以上
・パントテン酸(ビタミンB5):幼犬12 mg/kg以上 成犬12 mg/kg以上
・ナイアシン(ビタミンB3):幼犬13.6 mg/kg以上 成犬13.6 mg/kg以上
・ビタミンB6:幼犬1.5 mg/kg以上 成犬1.5 mg/kg以上
・葉酸:幼犬 0.216mg/kg以上 成犬0.216mg/kg以上
・ビタミンB12: 幼犬0.028 mg/kg以上 成犬0.028 mg/kg以上
・コリン:幼犬1,360 mg/kg以上 成犬1,360 mg/kg以上
これらの全段階の基準を満たした場合、「総合栄養食」と表示するのが可能となる上に、「全成長段階」または「オールステージ用」として認められます。
「表示注意点」
ドッグフードの総合栄養食の表示の仕方を確認すると、「AAFCO認定」や「AAFCO合格」と表示されていたりします。
万一このような表示をしているドッグフードを見つけた際には、むしろ怪しいと疑うべきです。
理由は、AAFCOはあくまでも栄養基準を示しているにすぎず、認証や検査を行うような機関ではないためです。
このため、AAFCOが定める基準を下回っていたり上回っていたからと言って問題はなく、したがって、認定や合格ということはありえないのです。
したがって、正しく表現するならば、「AAFCOの基準をクリアしている」などのような表記となります。
「問題点」
総合栄養食と表記されたドッグフードであっても、必ずしもワンちゃんの健康を守ってくれるフードとは限りません。
もちろん大前提として、総合栄養食と表記されていなければ話になりませんが、抜け道がいろいろあることを知っておきましょう。
・タンパク質
例えば、犬にとって最も重要な栄養素が、犬の必須栄養素である「タンパク質」となります。
しかも犬に大事なのが、動物性タンパク質です。
ところがタンパク質には、ご存知の通り、肉や魚に由来する動物性タンパク質と、大豆などに由来する植物性タンパク質の2種類があります。
AAFCOの基準値には、動物性と植物性の定めがありません。
したがって、どちらのタンパク質を使用して基準値をクリアしていても問題ありません。
ドッグフードの値段を下げるためには、コストがかかる肉や魚の動物性タンパク質は避けられ、安価な大豆などの穀物による植物性タンパク質が使用されるのが通常です。
このため、ワンちゃんにとっては、消化が苦手でアレルゲンになりやすい、植物性タンパク質が使用されて基準値をクリアしていても問題がないのです。
また、最低基準値をクリアすればOKとなるわけであり、タンパク質の成犬の値は18.0%以上となっていますが、ワンちゃんの健康を考えた理想値を言えば、最低25%以上は欲しいものです。
良質フードとされるプレミアムフードと呼ばれるドッグフードであれば、普通に25%をクリアしていることが多く、中には30%を超えるものもあるほどです。
・AAFCOの栄養基準は簡単に満たせる
ただ単にAAFCOの栄養基準を満たすだけであれば簡単にできてしまいます。
有名な話ですが、アメリカの高校生が夏休みの自由研究として、AAFCOの基準を満たすドッグフードを手作りで作りました。
この時使用した原材料が、廃油や革靴などを配合したものであり、単にデータ上の数字を満足してクリアするだけであれば、良質な原材料を使用しなくて簡単に達成できてしまうのです。
この事実を考えた場合、総合栄養食と表示されているだけで安心だと鵜呑みせず、しっかり自分の目で原材料をチェックすることが大切だと気づかされます。
・ペットフード公正取引協議会に加盟していないメーカーもある
大手メーカーや、古くから営業している会社などは、比較的多くペットフード公正取引協議会に加盟していますが、法律で縛られているわけではなく、あくまで加盟は任意となります。
このため、最近設立された良質なドッグフードを発売している会社などでは、加盟していないことが多くなってきています。
つまりこのような会社のドッグフードの場合、栄養条件を満たしていても、総合栄養食とは表示されないこととなります。
総合栄養食との表示は、一つの安全目安の基準となりますが、このような理由から表示されていないドッグフードも多くあることを認識しておき、必ずしも総合栄養食の表示がなければダメとは言えないことを認識しておきましょう。
一般食
愛犬にドッグフードを与える場合、健康面から言えば総合栄養食が適するように思えますね。
では何故どのような目的により、一般食が作られているのでしょうか?
実際に一般食とされるドッグフードを見てみると、缶詰タイプやレトルトタイプが多いことに気づかされます。
これらのタイプのフードは、ウエットタイプであることが多く、ワンちゃんの食いつきが非常に良いのが大きな特徴といえます。
つまり、副食といえる位置付にあり、主食の食いつきをよくするためのトッピングなどに利用されたりする、いわゆる「おかずタイプ」といったイメージのものに当たると考えられます。
また、愛犬の食欲が低下した時などに利用されることもあります。
さらに、おやつ・嗜好品といったニュアンスの位置付もあるでしょう。
目的食と呼ばれる療養食やサプリメントも一般食に当たります。
療養食とは、特定の病気を治療するケースなどでワンちゃんに特別に与えられるドッグフードです。
それぞれ特定の病気に合わせて、栄養成分の量やバランスが調整されており、食事の管理をする目的のために作られているドッグフードです。
特に病院で与えられる療養食は、獣医師の指導のもとで、その特定の病気のために栄養成分が調整された一般食が与えられることが多くなります。
ただし、市販される療養食であるドッグフードの場合、総合栄養食として栄養を満たした上で、特に必要な栄養成分が加えられているフードも多くあります。
まだ市販の療養食であるドッグフードの数は少ないですが、以下のような市販の療養食フードがおすすめとなります。
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